コラム

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予防歯科ってなに?具体的に言うと・・・

近年、テレビコマーシャルなどでも『予防歯科』と言うワードを聞くことが増えてきました。
予防という単語から、なんとなくはイメージがつくかと思いますが、このふわっとしたワードが一体どういうことを指しているのかをお話していきます。

予防歯科の始まり

予防歯科という言葉は今からおよそ200年前(日本では江戸時代)のアメリカから始まりました。
当時は塩をつけた布で歯を磨いていた時代に、アメリカの歯科医師が歯と歯の間を磨くこと(現在のフロッシング)が疾患の予防につながることを唱え、その後予防歯科の書籍を発表しています。

しかし、世間ではあまり着目されず、治療に重きが置かれた時代が続き、1950年代のアメリカで再び予防を謳う歯科医師が登場します。
歯科医師バークレーは、歯科医師の一方的な治療ではなく、患者への健康への理解を促し、治療には歯科医師と患者の二人三脚が必要という考えを提唱し現在もアメリカの予防の礎とされています。

また今では予防先進国と言われる北欧、スウェーデンでは将来的な治療による医療費の増大を懸念し、1970年頃に虫歯や歯周病に対する予防を国家戦略として立ち上げました。
その基盤を作ったのが予防の父と呼ばれるアクセルソン博士です。
なぜ虫歯になるのか、歯周病になるのかの原因を明らかにしたことで、その予防法が明らかになってきたのです。

その後そういった国々から徐々に予防という概念が日本にも普及してきました。

予防歯科って具体的には?

歯科治療は、遡ると虫歯→抜歯の時代から、虫歯→削る→詰める・被せるの時代を経て、治療を施した歯はしていない歯に比べて再び治療が必要になる可能性が高いことが分かり始め、原因である虫歯自体をまずつくらない という方向へとシフトしてきました。

虫歯だけでなく、歯周病や歯並びも悪くならないようにできる方法が明らかになってきたことで、より予防歯科という分野が確立されてきたように思います。

虫歯における予防歯科

・細菌を減らす!
保護者からの感染への留意
もともと歯のない赤ちゃんのお口の中には、虫歯菌は存在しません。
周りの虫歯菌を持つ人からの細菌感染によるものなので、歯が生えて虫歯菌が定着しやすい時期は、食器を分けたりなどの留意をすることで感染しづらくなります。

ブラッシングや補助器具(フロスや舌ブラシ)による細菌数の減少
菌がいないところには虫歯はできません。そのため、口の中の細菌数を減らすと言う意味では、歯ブラシやフロス、舌ブラシの使用などでの清掃は有効と考えられます。

・歯の強化!
フッ素の活用(年齢に適したフッ素濃度や量の使用)
フッ素が作用することにより、歯が溶けづらく虫歯になりづらい状態になります。
歯磨き粉に含まれるフッ素の濃度や量を年齢によって適切に使用することで、虫歯の予防効果はとても高くなります。
唾液が出づらい人は、フッ化物洗口なども有効です。

・唾液は出ているかな?
唾液には、虫歯菌が出す酸により溶けた歯の成分を、再び歯に戻してくれる作用があります。
本来は『溶けて戻って』を繰り返し、虫歯の進行はほとんど見られないはずですが、唾液の量が少ないことにより酸性の状態から戻れないと非常に虫歯のリスクが上がります。
加齢やお薬の影響で唾液が出づらくなっている可能性もあるため、唾液の量の確認が大切です。

・溶ける時間を減らす!
→食習慣の改善
虫歯菌が大好きな糖類を、短い間隔で摂取したり(飲み物など)飴などのお口の中に長く留まるものは、『溶ける⇨戻る』ではなく『溶ける』状態が続きます。
そのため、1日の中での飲食の状況を確認し、糖類を含むものを含まないもの(代用甘味料を使用したもの)に変えたり、時間帯を決めて摂取することで、歯を溶ける時間を減らすことができます。

歯周病における予防歯科

・ブラッシングの確立
歯周病においては、虫歯以上にブラッシングは大切となってきます。
歯茎周りに残った汚れは歯周病菌を成熟させ、歯茎を蝕み、出血しやすい状態にし、その出血を餌にさらに歯周病菌は活発化し、、と負のループが起こります。
年月をかけて進行してしまった歯周病を治すことは大変難しいことですが、なんともない時から意識をして、歯周病にならないようにすることはその何十倍も簡単です。
たかがブラッシングと思われがちですが、されどブラッシング。侮らずに日頃からのケアを大切にしていきましょう。

・補助器具などの使用
歯ブラシだけのブラッシングでは汚れの落とし具合は60%ほどとも言われています。
そこにフロスや歯間ブラシなどの補助器具を使用することで、磨き残しをさらに減らすことができます。

・禁煙
タバコは歯周病にとって歯医者にとって天敵とも言えるものです。

私たちの血液には『免疫細胞』と言う、細菌から体を守ってくれる細胞がいます。しかしタバコにより血管は収縮し、免疫細胞の働きを弱め菌に対する抵抗力を弱めてしまいます。
また、長期間の喫煙により歯茎は繊維質でかたくなり、治療をしても反応が見えづらく効果が出にくい状態になります。
そして最も厄介な点が、喫煙者にとってタバコはストレス発散であったりコミュニケーションのツールであったりするため、私たちがどんなにやめて欲しくても、なかなか辞められない人が多いということです。

禁煙は本人の意思が非常に大事になってくるため、禁煙外来への受診などもお話させていただくこともあります。

・力のコントロール(歯軋りなども含む)
上の歯と下の歯が1日の中でくっついている時間はどのくらいだと思いますか?
本来、上下の歯は安静な時は約2~3mm離れた状態が望ましいとされています。そのため、上下の歯が接触するのは飲食の時など、およそ20分とされています。
もし、皆さんの中でもっと多い時間くっついていると思った方は、歯を働かせすぎている可能性があります。
日中のお仕事中など、ふと意識してみた時に歯と歯がくっついている方は要注意です。

また、寝ている時の歯軋り・食いしばりなども危険信号です。通常の食事などより何倍もの力がかかり、歯や歯の周りの組織に大きなダメージが生じている可能性があります。

・肥満の改善
実は肥満も隠れた歯周病のリスク因子となっています。
脂肪細胞から分泌される物質が骨を溶かす働きをすることがわかっています。

また、食事のバランスを整えることにより、血管の壁が強くなり出血しづらくなるなどの効果もあります。

・細菌叢のバランスを整える
よく聞く善玉菌、悪玉菌。お口の中にも同じようにそれらが共存しています。
そしてストレスや口腔環境の悪化などによりそのバランスが崩れることにより歯周病が発症します。
そのため、悪い菌が増えた状態から良い菌を増やしてあげて安定した口腔内にすることがとても大切です。

歯並びにおける予防歯科

・悪い癖の改善
従来、歯並びが悪いのは遺伝的が大きいと考えられていましたが、近年では遺伝的影響はとても少なく、悪い姿勢や癖などによって正しい成長が得られない結果、歯並びが悪くなることがわかってきています。

遡ると、赤ちゃんがお腹の中にいる時のお母さんの姿勢であったり、使用する哺乳瓶などによっても発達に影響が出ます。
成長しきった大人になってからだと、骨格は変えることができず、長く染みついた癖も取り除くのは非常に困難です。

骨格が成長する子供のうちにその悪い癖を取り除き、正しい成長発育を促すことがとても大切になってきます。

まとめ

予防歯科は、虫歯や歯周病の治療に比べて費用や負担が少なく、口腔の健康を維持するために重要な役割を果たします。

定期的な予防歯科のケアを受けることで、お口のトラブルを未然に防ぐことができます。