歯並びは遺伝的なものだから、親の歯並びが悪かったら子供も悪くなるのは仕方ないと思ってはいませんか?
歯並びには後天的な影響がとても大きく、姿勢や呼吸、食事の時の筋の動きなどによって顎の成長方向が変わります。
また、成人でも子供の頃の歯並びを悪くする癖が抜けていないことにより、矯正をしたのにまた歯並びが後戻りしてしまった方というのはとても多いです。
現在ではオーラルフレイルと言われる高齢者の筋力の低下が問題となっています。
なるべく早い時期に正しい筋肉の使い方や筋力を上げておくことが、高齢になった時に良い状態となることが知られています。
目次
⑴歯並びに影響する要因
①口呼吸
本来、呼吸をするのは呼吸器官であるお鼻ですが、消化器官であるお口で呼吸をすることは本来異常なことです。
通常、安静時には舌は上顎にくっついた状態が理想とされており、その状態では口から呼吸ができないようになっています。
口から呼吸しているということは、舌の位置が下顎側に下がった状態になっているということです。
上顎に舌が触れず下がった状態は上顎の前方への正しい成長ができず、下方への顔面の成長傾向を示し、面長な顔立ちとなってしまいます。
重症な鼻炎や花粉症などによる口呼吸であれば、早めにそちらの治療をすることも大切です。
②舌・唇の癖
歯は頬や唇の筋肉と舌の筋肉に挟まれた状態であり、それらの筋肉のバランスがとれたところに並びます。
どちらかが弱かったり強すぎたりすると、それにより歯が内側に倒れたり、外側に押されたりして歯並びが悪くなる原因となります。
唇を巻き込む癖や飲み込む時に舌を前に押し出す癖などがあります。
③誤った離乳食
育児本などでは、月齢に応じた離乳食が載っています。
そうした離乳食の形態は、おおよその歯の萌出時期にあった食事形態となっていますが、実際には成長のスピードは一人一人異なっています。
同じ月齢でも奥歯が生えていることいない子では、すりつぶす機能があるかどうかが変わるため、まだ奥歯が生えていない子にすりつぶす必要のあるものを与えた場合は、いつまでも飲み込めずに食事時間が長くなってしまうという原因になることも少なくありません。
④姿勢の悪さ
近年、スマホやタブレット端末で動画やゲームをする機会が増えており、つい猫背でうつむいた姿勢になりがちです。
この時やはり舌の位置も下がり、下顎が前に出た状態となり、口呼吸が誘導される可能性があります。
スマホなど以外も読書をするときなどは、目線の高さに合うようにクッションなどを使って良い姿勢で行うことがおすすめです。
⑤3〜4歳以降の指しゃぶり
指しゃぶりは社会性が発達する3歳ころになると自然に消失することが多いですが、寂しさを紛らわせたり、精神的な安定を得るために続いてしまうことがあります。
長期にわたる指しゃぶりは頬の筋肉が強く収縮することによって、狭い歯並びになってしまったり、上下の前歯が噛み合わない開咬といった噛み合わせを引き起こす恐れがあります。
指しゃぶりを止めるには、スキンシップを増やしたり、優しくやってはいけない理由を伝えましょう。
『ゆびたこ』という指しゃぶりについての絵本などの読み聞かせもおすすめです!
⑥食いしばり歯ぎしり
普段の食事の数倍の力がかかる歯ぎしり。
歯はたったの20gほどの力でも動いてしまうため、体重以上の力がかかる食いしばりや歯ぎしりでの力がかかり続けると歯が傾いたりして歯並びが悪くなる恐れがあります。
しかし子供の歯ぎしりは成長発育に伴い顎の位置や噛み合わせを決めるために行なっていることも多く、重度でなければあまり心配はないと思われます。
睡眠環境(電気がついたままの部屋やテレビの音が聞こえるなど)によって睡眠の質が悪くなっている可能性もあるので、もしそういったことがあれば改善してみると良いでしょう。
⑦遺伝的要因
歯の大きさや骨格などは遺伝的影響を受けます。
歯が大きい場合、並び切らずに歯並びが悪くなる要因の一つにはなり得ます。しかし、だからと言って必ずしも歯並びが親と同じように悪くなるというわけではありません。
前述したように、後天的な要素により正しい成長発育をさせることができれば、その可能性を最小限に抑えることができます。
⑵大人も気をつけよう!
①頬杖
デスクワークが多い方などはお仕事をされている時など無意識に頬杖をつくことはありませんか?
いつも同じ側で頬杖をつき、歯を外側から押す力が働くことで歯並びが狭く押されたような状態になることがあります。
顎の関節にも負荷がかかるので、気づいたらやめることを習慣づけましょう。
②うつ伏せ寝
寝る時は仰向けがおすすめです。
仰向け意外ではやはり押される力がかかりやすいため、こちらも歯並びや顎の関節にも影響が出る恐れがあります。
③飲み込み方のチェック☆
飲み込み方が、乳児嚥下という赤ちゃんの時の名残りがあると、舌を前に押し出しながら飲み込んでしまっている場合があります。
<チェックの仕方>
⒈左右の口角(口の端っこ)に人差し指を引っ掛けて、唇を閉じないでイーっとした状態にします。
⒉鏡を見ながら唾をごっくんと飲みます。
⒊舌が前に出てきて唾が前にじわっと出てくる場合(❶)や、唇が閉じないとうまく飲み込めない方(❷)は、使わないはずの筋肉を使って飲み込んでいる可能性があります。
❶に当てはまった方→いつも飲み込むたびに舌で前歯を押している状態
前歯が前方に開いてきたり、上下の前歯が噛み合わなくなる恐れがあります。
❷に当てはまった方→飲み込むたびに口周りの筋肉で前歯を後ろに押してしまっている状態
前歯が奥に押されることで、歯がより重なってくる可能性があります。
⑶まとめ
学校では正しい飲み込み方を習う機会がないため、大人になるまで知らずに異常嚥下癖と言われる癖が残ってしまっていることがあります。
可能であれば小さいうちに正しいお口の機能を得ることによって健やかな成長を促し、きれいな歯並びを獲得していけるのが一番幸せなことだと思います。
大人の方でも遅くはありません。
昔より歯並びが悪くなってきたと思う方は、もしかしたらそういった癖の名残りで起きている可能性もあります。
将来的に誤嚥などを防ぐことにも繋がりますので、もし思い当たることがあれば是非お声がけください。