コラム

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『お子さんの将来の歯並びを考えて』〜ママとパパにやってほしいこと〜

近年、口腔機能発達不全症という診断がつくお子さんが増えています。

口腔機能発達不全症とは、

・食べる機能

・話す機能

・その他の機能(口呼吸・口蓋扁桃肥大・いびきなどの有無)

明らかな原因疾患がない状態で、これらが十分に発達していないか、正常に機能が獲得できず、専門的関与が必要な状態を指します。

 

機能が獲得出来ないことで、正しい成長発育が促されず、結果として歯並びの不正を引き起こします。
また、将来的に高齢になった時の機能低下も強く、誤嚥などを引き起こす可能性が高いこともわかってきています。

 

口腔機能発達不全症には「形態の問題が原因となり、機能に問題を生じているもの」と、「機能の問題が原因となり、形態に問題を生じているもの」とがあります。

 

・形態の問題が原因
例:歯の萌出の遅れ、虫歯による歯冠崩壊(歯が崩れてしまっている)、舌小帯(舌の付け根のヒモ)が短いなど

・機能の問題が原因
例:口唇閉鎖不全、口呼吸、舌突出癖、指しゃぶりなど

 

形態の改善は治療により比較的早く回復が認められるのに対し、機能についてはそうはいきません。
普段の姿勢の改善や、筋力を上げるためにトレーニングなどが必要になるため、時間がかかります。

 

 

⑴よく見られる機能の問題

①口唇閉鎖不全(こうしんへいさふぜん)

普段からお口がぽかんと開いてしまっている状態を口唇閉鎖不全と言います。

お鼻で呼吸ができる状態(鼻疾患がないか)であれば、唇を閉じるための筋肉である口輪筋が弱いため、そのトレーニングが必要となります。

歯はお口の周りの筋肉の調和がとれたところに並ぼうとするため、唇が開いていると歯を内側に押し戻す力が弱く、前に出た状態(出っ歯)になります。

 

②口呼吸(くちこきゅう)

口呼吸とは、本来呼吸するべき鼻ではなく、長時間にわたり口で呼吸をすることを指します。

お口での呼吸は様々な問題を引き起こします。

 

⒈口腔内環境の悪化

口呼吸により、唾液によって守られているはずの口腔内が乾燥してしまい、虫歯のリスクが上がる可能性があります。

 

⒉感染リスクの増加

また、本来鼻から吸った息は、鼻毛や粘液などにより菌が排除されて、加温・加湿された状態で肺に運ばれ、酸素と二酸化炭素の交換がスムーズに行われるようになっています。

しかし、口から吸った空気は直接のどに菌やウィルスを届けてしまうため、感染もしやすくなります。

 

⒊集中力の低下

口呼吸での必要以上の二酸化炭素の排出により、血中の二酸化炭素濃度が低下します。

動脈中の二酸化炭素濃度が低くなると、動脈が収縮して末梢血管が細くなり、さらに酸素を全身に届ける赤血球が酸素を手放しづらくなるため、脳の酸素供給量も低下し集中力の低下などが起こります。

 

⒋成長発育の問題

お口が開いていることにより、下顎とともに舌が下がった状態(低位舌:ていいぜつ)になりやすく、本来上顎に舌がくっつくことで成長が促されるはずが、刺激が足りず上顎が高いままの状態になってしまい、さらに舌がつけづらくなるという悪循環が生じます。

 

 

③乳児型嚥下の残存

嚥下(えんげ)とは飲み込むことを指します。

赤ちゃんの母乳のときの飲み込み方を乳児型嚥下から、離乳食が始まり発達とともに成熟型嚥下へと飲み方が変化していきます。

しかし長期にわたる哺乳瓶の使用や授乳の継続、おしゃぶりの使用、吸指癖などがある場合、本来必要のない時期・期間に前歯に介在した状態で嚥下をしている状態となり常に舌が下顎がわの低いところに位置します。

それにより乳児型嚥下が残存しやすくなります。

乳児型嚥下は舌を前に突出させて飲み込むため、前歯が前に押され、出っ歯や開咬(前歯が噛み合わず開いた状態)になります。

 

 

⑵ご家庭で取り入れていただきたいこと

①授乳の時

現在では“ながら授乳”が非常に増えているようです。

授乳のときは、ラッチオンという飲み方が推奨されており、

・乳首だけでなく乳輪までしっかりと口に含んだ状態になっているかどうか

・上下の唇が正しく外側に開いたように向いて授乳できているか

・リズミカルに飲めているか

・適切な授乳時間(15〜20分)で哺乳できているか

などを見ながら授乳ができるととてもいいです。

また哺乳瓶は、ゴム乳首のサイズが合っていないと飲むスピードに影響を与え、またミルクが出る穴が大きすぎるものだと正しく筋肉が成長しづらくなるため、確認が必要です。

 

②離乳の時

⒈離乳の開始

・首が据わっているか

・寝返りができる

・5秒以上座れるかどうか

を確認して開始をしましょう。

早すぎる離乳食の開始は注意が必要です。

 

⒉姿勢の確認

授乳時のようにやや寝かせた状態は誤嚥や誤飲を招きます。

食事の際は足底がしっかりと着く状態になるよう、椅子の高さを調節するか、もしくは雑誌などを重ねて膝が90°くらいになるようにしましょう。

 

⒊食べ方の確認

離乳食開始当初は、授乳時の舌の動き(前後の動き)が中心ですが、徐々にそれらの反射が消失していきます。

しかし、実際の月齢と期待される状態がかけ離れている場合は、ミルクや母乳の量が多いかもしれないので、授乳の状況なども確認してみましょう。

 

⒋スプーンの大きさの確認

<離乳初期>

・先端の幅が小さく細いスプーン

・口当たりの良い木製やプラスチック製

 

<離乳後期>

・幅広のスプーン

→同じ量でもスプーンの手前に乗せることができるため、上下の唇で捕食することができる

・金属のスプーン

→歯に金属が当たる感覚や、唇での温度を感じる感覚を養う

 

 

そのほか、(1)のような状態が見られた場合はかかりつけ医に相談し、機能の改善を図りましょう。

 

 

⑶まとめ

お忙しいご家庭では色々細かく対応するのが難しいこともあるかと思います。

しかし小さい時の習慣が後々影響を大きくしてくるのも確かです。

大きくなってから歯並びの治療をなるべくしないで済むように、日々の意識を少し向けていけると良いなと思います。

なるべく負担のかかりづらい提案のお手伝いをしていけたらと考えておりますので、お気軽にご相談ください。