当院では病院名にもあるように、メインテナンスを重要と考えております。
英語で表記すると“Maintenance”となり、一般的にはメンテナンスと言われることが多いかと思いますが、学術用語ではメインテナンスが正しく、継続的な治療や健康を維持するための医療行為を指しています。
歯の治療が好き!という方は少ないと思いますが、歯のお掃除はスッキリして気持ち良いという方は多いのではないでしょうか。
当院では必要な治療をしっかりとした後は、気持ちよくメインテナンスに通ってもらい、できる限り再び治療へとならないようにしていきたいと考えています。
では、なぜ治療が終わっても定期的にメインテナンスに通う必要性があるのでしょうか?
目次
『メインテナンス』とは?
『Maintenance:メインテナンス』を和訳すると維持・補修・手入れなどが出てきます。
歯科医院での治療が終了した後に、その状態を維持していくための行為を指していると考えております。
お口の中は、食事のたびに欠かすことなく毎日使用し、温かいもの・冷たいもの・酸っぱいものなど様々なものにさらされる過酷な環境です。
歯も、人工的な詰め物も、温度変化などにより膨張と収縮を繰り返しています。それにより入れたばかりの詰め物よりも、長く入っていた詰め物の適合は悪くなります。
そして成人のお口の中には300~700種類の細菌が、多い人では1兆個もいると言われています。これは便よりも多い数値です。
通常悪さしない菌も、ご自身の環境や体調の変化などによりそのバランスが崩れて悪さをすることもあります。
また奥歯1本(約1㎠)に対し、食事の時の咀嚼でおよそ体重分くらいの力がかかっています。
夜間の歯ぎしりがあったりするとその4~5倍の力がかかり、詰め物が割れてきたり、場合によってはご自身の歯が割れてくることもあります。また、歯を支えている組織にも大きなダメージを与える可能性もあります。
そんな複雑なお口の中なので、普段のお掃除だけでは中々行き届かないであろう部分(磨きづらく汚れが溜まりやすい部分、力のかかり具合や、歯の周りの組織の状態)などをメインテナンスに来ていただき確認していきます。そしてまた次のメインテナンスにいらっしゃるまでの間に問題がなるべく起きないようにしていくのが我々の仕事だと思っています。
『メインテナンス』のメリットと重要性~研究データを踏まえて~
メインテナンスを継続して受けている方とそうでない方では、将来の歯を失うリスクが異なるというデータがあります。
厚生労働省のHPにも記載されているある研究データでは、①歯周病の治療はしたがメインテナンスに通院しなかった人と、②歯周病の治療をしたのち、メインテナンスに通院した方を比較すると、5年間で①の人達は②の人達の約2倍の歯が喪失したという結果が出ており、治療をしてもメインテナンスが歯を守るために重要であることが示唆されています。
また、トヨタ関連部品健康保険組合と豊田加茂歯科医師会の共同調査で、定期的に歯科医院でメンテナンスをしている方は、生涯医療費が平均よりも安価に抑えられるという結果が出ました。
トヨタ関連部品健康保険組合では、この調査結果について、歯が悪いと食事が偏ったり、歯並びが悪くなったりすることで、糖尿病や肩凝り、骨粗しょう症を招き、体全体の健康に影響すると分析されています。
まとめると、継続したメインテナンスに来ていただくことは
→ご自身の歯を残していくために非常に重要
→良く噛めることで、脳への刺激や内臓への負担軽減
→全身の病気を予防することにもつながるため、医療費も削減
などのメリットがあると思います。
『メインテナンス』で行うこと
では、実際にメインテナンスはどういったことを行うのでしょうか?
- 問診
前回から環境やお口の状態で変化があったことなどの聞き取りを行います。 - レントゲン撮影
当院では虫歯のリスクに応じ、メインテナンスごとのレントゲンでの確認頻度も変えさせていただいております。
お口の状態の変化に応じてレントゲンを撮影していきます。 - 口腔内チェック
全体を見て、歯茎の赤みや虫歯になりそうな箇所など、変化のあるところがないか確認していきます。 - 歯周組織検査
歯茎の状態の変化を確認します。 - 染め出し
必要に応じて歯ブラシが当たりづらい場所を視覚的にお伝えしやすいように、磨き残しが赤く染まる液を使用していきます。 - クリーニング
歯石がある箇所や、磨き残しの部分を専用の機械でお掃除していきます。 - 噛み合わせの確認
歯周組織の状態と合わせ、噛み合わせが強すぎるところはないかを確認します。 - フッ素塗布
高濃度のフッ素ジェルを歯に塗布していきます。
大まかな流れをご説明させていただきましたが、次回のコラムにてさらに深くお話していきたいと思います。
『メインテナンス』の間隔~適した頻度とタイミング~
メインテナンスに次はいつ来たらいいの?という点です。
人それぞれお口の状況が違うため、“全員が一律同じ”という訳にはいきません。
当院では以下の項目を目安に、間隔を決めさせて頂いております。
・リスクが高い方→1~3ヶ月
例:お掃除が苦手な方、唾液が出づらくお口が乾きやすい方、歯周病が進んでいた方でまだ不安定な部分があるなど、長く間隔を空けてしまうと悪くなるリスクが高い方
・リスクが中等度の方→3~4ヶ月
例:歯周病の進行が見られた方で現在病状が安定した方など
・リスクが低い方→6ヶ月位
例:お掃除の状態も良く、歯周病・虫歯のリスクともに低く安定している方
これらと合わせて、患者様のご都合も考慮して間隔を決めさせていただいております。
気になる『メインテナンス』の費用は?
通常の保険治療の場合、
・再診料
・歯茎の検査
・クリーニング費用
・衛生士によるブラッシング指導
3割負担の方で、これらを含めておよそ3000円くらいになります。
レントゲンを撮影した場合は、小さいレントゲンであれば1枚につき約150円、大きいレントゲンであれば約1200円が加算されます。(同じく3割負担の方の場合)
これらは保険治療に則り費用が決まりますが、「検査はどうしてもしたくないけどお掃除したい!」という方や、「ホワイトニングと一緒にクリーニングもしたい」といった場合は保険適応外となりますため、当院では¥11,000にて行っております。
まとめ
メインテナンスは、治療が終了した時のいい状態を維持していくためにとても大切であり、継続したメインテナンスを受けることがご自身の歯を長く健康な状態を保つことに繋がります。
今問題ないから良いか、ではなく“将来のご自身のために”、是非メインテナンスを受けていただければ幸いです。