一言で『歯のメインテナンス』といっても、具体的にどのような流れなのか?それぞれどういったことをするのか?がわからないといった声を多くいただきます。
この記事を読んでいただき、歯のメインテナンスの流れや意義が少しでも皆さんにお伝えできればと思います。
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問診
初めての方も継続してきていただいている方も、日々の生活の中で環境や体調が変化していきます。
その日の体調や前回からのお口の中の変化を聞き取りさせていただきます。
お口の中は繊細で、日々のストレスなどによっても変化が見られます。
引用元:精神経誌(2008)110巻3号 「出来事のストレス評価」夏目誠
日々の色々な出来事には気づかないうちにストレスになっていることがたくさんあります。こういったストレスから歯軋りが引き起こされたり、免疫力が低下することによりお口の中にもトラブルが起きたりします。
“歯茎が腫れた・親知らずが腫れた”という方の多くは、歯ブラシの状態ももちろんありますが、学校や仕事が忙しかったり、季節の変わり目だったり免疫力が弱まるタイミングにとても多いように感じます。
また転職により今までと生活リズムが変化し食事や歯磨きのタイミングが変わったり、または妊娠により食事の嗜好が変わったりしても急に虫歯ができるようになったりする原因の一つになります。
全身的なご病気で飲んでいるお薬が変化することも影響してきます。
副作用として歯肉増殖(歯茎が腫れたようにモリモリしてきます)が高血圧のお薬の中には現れることもあります。
他にも唾液の量が減少するような副作用を持つ抗精神病薬などもあります。
全員が全員、副作用が現れるものではないので、必要な方にはこちらから処方してくださっている医療機関へお手紙を書かせていただき、可能であればお薬の変更を申し出る場合もあります。
もしこういった環境の変化や服薬の変化があった場合、是非教えていただけるとたいへん助かります。
レントゲン撮影
虫歯のなりやすさや歯周病の進行度合いにより、前回のレントゲン撮影から一定期間が経過したタイミングで、状態の変化を確認するためにレントゲンを撮影することをお勧めしております。
レントゲンは肉眼で見ることのできない部分を2次元的に確認することができます。
大きいお写真では全体的な骨や歯、顎の関節の状態などがわかります。
顎のラインから噛み合わせの力の強弱なども推測できます。親知らずの状態なども大きいお写真の方がわかりやすいことが多いです。
またお子様の場合では、まだ生えていない大人の歯の有無や、過剰歯と言われる余分な歯を発見できることもあります。
小さいお写真は1本1本の歯をより細かくチェックすることができます。
虫歯の進行度合い、詰め物と歯の段差、根っこが割れているかどうかや根の先に膿が溜まっているかどうかなど、大きいお写真の中で見つかった病変をより詳しく確認する必要がある場合や、削らないで経過を見ている虫歯が進行していないかの確認のため撮影させていただく場合があります。
根っこの病変や、親知らずと神経や血管との位置関係をさらに詳しく確認する場合にはCTを取らせていただくこともあります。
通常のレントゲンは2次元の平面のお写真なのに対して、CTは3次元の立体的な状態を見ることができるため、通常のレントゲンでは見られない角度での確認ができます。
心配な放射線被曝に対してですが、我々は日々の生活の中でも、大気や食べ物などから自然放射線により年間約1.5ミリシーベルトを被曝しています。
それに対し、当院で使用されているデジタルの撮影では小さいお写真も大きいお写真も1枚あたり約0.005ミリシーベルトと、歯科におけるレントゲンによる被曝はごく微量となっています。
もちろんごく微量ではありますが被曝するということを踏まえ、撮ることで得られる利益が上回ると考えられる場合は撮影をさせていただいておりますが、不安な方は遠慮なくお申し出ください。
口腔内チェック
レントゲンと合わせ、お口の中全体をチェックしていきます。
・虫歯の有無:歯の明暗や引っ掛かりなどの確認
・歯茎の状態:赤みや傷などがないか
・粘膜の状態:頬や舌などの色調、傷などがないか
さらにここから歯茎の細かい検査を行い、より詳しい状態を確認していきます。
歯周組織検査
歯と歯茎の間には歯肉溝(しにくこう)と言われる溝があります。
通常だと1~3mmほどのこの溝ですが、炎症が起きて歯との結合が破壊されていくと、どんどん深くなっていきます。深くなった溝を歯周ポケットと言います。
溝が深くなると、日々のお掃除では汚れを取りきれなくなり、さらに炎症が起きて、また深くなり・・・という悪循環が起き始めます。
そのため、当院では1本の歯の周りで6箇所の数値を計り、確認させていただいております。
そして炎症が起きている目安として歯茎からの出血が挙げられます。
炎症が起きている箇所は、細菌が歯茎を傷つけているような状態になっているため、少し触るだけで血が出てくる状態となります。
また、歯周病菌の餌となる出血の部位が多いほど、歯周病菌にとっては居心地が良く活発になってしまいます。
そして最後に歯の揺れがあるかどうかをみていきます。
すでに骨が減ってしまっていたり、力が強くかかっている歯などは揺れが見られます。
歯が絶えず揺さぶられている状態だと、歯の周りの骨はより吸収しやすくなります。イメージとしては地面に杭をさし、それを揺すると、杭のそばの土はなくなっていきます。
同じようなことが歯とそれを支えている骨に起きるという訳です。
なので、揺れが強い場合、その揺れが改善できるように固定したり、噛み合わせの調整が必要な指標となります。
染め出し
歯ブラシのあたり具合の確認として、磨き残しが赤く染まる液を使用し、磨きづらい部分を視覚的にわかりやすくしていきます。
顎の大きい人小さい人、歯並びが良い人悪い人、器用な人・不器用な人、舌や頬の力が強い人弱い人、入れ歯を使用しているかどうか、口呼吸があるかどうか、、など磨き具合に影響してくる要因はたくさんあります。
磨けない部分がなぜ磨けないのかを一緒に考えながら、工夫をして磨いていく方法を見つけるお手伝いさせていただければと思います。
1度の練習ですぐに100%磨ける方はそうそういません。その後も必要であれば繰り返し確認し、少しずつご自身の日々のケアの中でコントロールできるようにしていくことが目標です。
クリーニング
専用の機械で、残った汚れを細かく落としていきます。
超音波にて歯石や歯周ポケットの中をきれいにし、柔らかい汚れは音波のブラシで取り除いた後、表面をツルツルに仕上げ、新しい汚れがつきづらい状態に仕上げていきます。
触っている中で、お痛みなどがあれば必要に応じて強度や器具を変えて対応しますので、遠慮せずお申し出ください。
噛み合わせの確認
まっすぐカチカチ噛んだ状態と、横にギリギリ歯軋りをしてもらった時に、歯に強い負荷がかかっていないか確認します。
ご自身でも確認できる方法ですが、これらをした時に他の歯よりも大きく動く歯があると、その歯には無理な力がかかっている可能性があります。
無理な力は、歯やが欠けたり被せ物が外れたり、また、歯の周りの組織を破壊してしまったりと色々な悪さをします。
必要に応じ、調整させていただくことをご提案させていただきます。
フッ素塗布
仕上げに高濃度のフッ素を塗布します。
フッ素はむし歯の原因菌の働きを弱め、歯の再石灰化を促進し、歯の表面を強化してむし歯になりにくくする働きがあります。
歯科医院で使用するフッ素濃度は自宅で使える高濃度フッ素入り歯磨剤(フッ素の濃度が1450ppm)よりもはるかに高い9000ppmとなっており、定期的な塗布によるう蝕予防効果が認められています。
虫歯のなりかけの歯や、歯茎がさがり根っこが見えている部分には特に効果的です。
塗布後、効果が維持しやすいよう30分間の飲食を控えていただくようにお願いをしております。
~まとめ~
メインテナンスでは、普段ご自身で頑張っても行き届かない部分を定期的にケアさせていただくことで、健康な状態を維持していけるようにしていきます。
期間が空きすぎてしまうと、それを取り戻すにはまた時間や回数がかかってしまったり、または元の状態には戻せない可能性も出てきてしまいます。
それぞれの方に合った期間で、定期的なケアを是非受けていただければと思います。