コラム

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『歯並びが引き起こすリスク』 〜その歯並びはなぜ治したほうが良いのか〜

歯並びは理想と言われる歯並びはあっても、ほとんどの人が理想的な歯並びをしているわけではありません。

 

その全てが何か問題を起こすわけではなく、歯並びの不正の度合いや、ブラッシングの具合、噛む力の強さなどの因子が組み合わさり悪さをすることがあります。

逆に、歯並びに問題があっても磨くのがとても上手で、噛む力もあまり強くなく、その歯並びとうまく付き合っていける方ももちろんいます。

 

そして、歯並びの治療をしたからといって、完璧に理想的な歯並びになれるかというと、そうではありません。

現状の歯並びからあまりにも逸脱して理想的に歯を並べたいと思っても、生体に無理がかかってしまうため、動かせる限度があります。

 

しかし、子供のうちであれば歯を並べる器である骨を大きく成長させることで、歯を並べるスペースをしっかり作ってあげることもできますし、大人の方でも重なった歯を並べてあげることで清掃性が大きく上がったり、歯並びによって引き起こされるいくつかの問題を回避できる、歯を削らない低侵襲な治療であることも確かです。

 

今回は歯並びによって引き起こされうる問題、つまり歯並びの治療で回避しうる問題についてお伝えし、その必要性が少しでもお伝えできればと思います。

 

 

⑴歯のそれぞれの機能

①前歯

前歯は根っこが長く、歯をずらした時に力を支えてくれる機能を持っています。

また物を切断するために先端が平たく薄い形をしており、切歯(せっし)とも呼ばれます。

 

 

②糸切り歯

前歯に含まれることもある糸切り歯は、犬歯とも呼ばれ、先端が鋭く尖った形態をしているため昔から糸を切る時に使われてきました。

全ての歯の中で一番長い根っこを持ち、横揺れの力を支えてくれるとても大切な歯です。

 

 

③奥歯

奥歯は物を噛み砕くため、椅子のように根っこが2〜4本ほどに分かれ、力を支えてくれる機能を持っています。

また噛む面は臼のような形をしていることから、臼歯(きゅうし)とも呼ばれます。

理想的にはこれらの機能を果たすべき位置に並んでくれているのが一番ですが、なかなかそうはいかず、歯並びによっては奥歯にも前歯と同じ力がかかってしまったりすることも多々あります。

 

 

⑵歯並びによって起こりやすい問題

①虫歯のリスク

歯が並び切らず、重なって生えてしまっている場合、歯ブラシが届きづらく虫歯のリスクは上がると言えるでしょう。

また、歯の微妙なずれによって食べた物がうまく流れず、溜まりやすい原因にもなります。

 

②歯周病のリスク

虫歯と同様に、重なっているところなどで磨けない部分があると、炎症が引き起こされ歯周病のリスクが上がる恐れがあります。

また、歯並びの関係で力がかかりやすい歯は、炎症が起きた時に骨の吸収が進みやすくなるため、歯周病の進行にも影響していると言えます。

前述した歯の機能が歯並びによってその機能を果たせない状態の場合、他の歯に本来の機能ではない力がかかり、その歯の周りの組織の破壊につながる恐れがあります。

 

③見た目のコンプレックス

前歯の並びによっては、笑った時に気にして隠す方を度々見かけます。

もちろん歯並びだけではなく、歯の色が黒いなど他の原因からの場合もありますが、歯並びを気にされている方にとって改善することで気持ちよく笑顔になれることは、人生の質をも変える可能性を秘めていると思います。

 

④あごの関節の痛み、耳鳴り、頭痛

あごの痛みの原因の一つとして、噛み合わせによるものがあります。

前歯の傾斜が強く、下あごが後ろに押し込まれることで関節部分が圧迫され、顎の痛みにつながることがあります。

また、そこから耳鳴りや頭痛が誘発されることもあります。

 

⑤歯の痛み

歯並びによって強く当たってしまう、もしくは本来の歯の機能(1参照)とは異なる力がかかりすぎることにより、歯に細かいヒビが入ったり、歯の周りの組織の炎症が起こり痛みとして症状が出る場合があります。

 

⑥胃腸障害

噛み合わせが悪く、うまく噛み砕けていない場合、大きい塊のまま食物が胃に運ばれるため、消化に負担がかかり胃腸障害を起こすことがあります。

 

⑦発音障害

前歯の隙間が開いていると、発音時に隙間から空気が漏れてサ行やタ行、ナ行、ラ行の発音が不明瞭になりやすくなります。

 

 

④や⑤であれば歯の形態を少し調整することで改善することもありますが、調整量が多すぎる場合は、調整後に知覚過敏の症状が出たり神経の処置が必要になる恐れがあります。

そのため、可能であれば矯正治療を含めて考えられるのが理想的です。

 

 

⑶矯正治療(歯並びの改善)をした時のデメリットは?

①期間がかかる

歯並びの治療には期間がかかることが多いです。

年齢や、部分的な矯正なのか全体なのかによっても変わりますが、一般的に成人の矯正であれば2〜3年かかることが多いです。

そのため、治療の途中に引越しなどで通院が困難にならないように、時期を考えて始めるのがおすすめです。

 

②費用がかかる

矯正治療は基本的に保険診療ではなく自費診療になるため、病院ごとで費用を定めており金額は様々ですが、おおよそ60〜100万円ほどかかります。

しかし矯正治療をすることで歯を削らないで済む可能性があるのであれば、安くはないですが決して高い金額でもありません。

歯は削っても再生することはありません。

また、削ってつめた境目などは再び悪くなりやすく、段々と削る量が増え、神経の治療が必要になり、歯が薄くなってしまい最終的に割れて抜歯になる、という負のループになる可能性も少なからずあります。

そう考えると、健康にも寄与し、歯を守ってくれる矯正治療はとてつもない価値があると言えます。

 

③根っこが短くなることがある

原因ははっきりとしていませんが、歯を動かしていく際に骨の表面にある皮質骨という部分に根っこが触れると、根っこの先端が吸収し短くなることがあります。

しかし、歯周病のように歯の頭の方から骨がなくなるのと違い、先端が吸収しても骨との接着面積はそれほど減らないため、歯の揺れなどには繋がりづらいと言われています。

 

④歯茎が下がることがある

もともと前歯の外側は骨が薄くて吸収しやすい場所のため、歯の位置によってはその部分の歯茎が下がりやすい可能性があります。

 

 

⑷まとめ

矯正治療は子供の頃にやれることと大人でやれることには少し違いがあります。

その大きな違いは骨の成長を利用できるかどうかです。

大人の場合は歯が並ぶ器である骨を大きくすることはできないので、歯を抜いて並べるスペースを作るようになりますが、成長前のお子さんであれば骨の成長方向にアプローチをして歯を並べるスペースを作り、歯を抜かずに並べられる可能性があります。

健康な歯を抜くことはご本人も可能であればしたくないと思います。

そのためにも早めのアプローチをしていきたいと考えております。

まだ成長を利用することができるのかどうか、もし検討されている方がいらっしゃればいつでもご相談ください。