歯並びを治す矯正治療には、大きく分けてワイヤー矯正とマウスピース矯正の2つがあります。
古くからあるワイヤー矯正に対し、近年マウスピース矯正のニーズが非常に増えてきています。
それぞれ同じように歯を動かす矯正ですが、得意・不得意があります。
どういった場合によりどちらの矯正が適しているか、お伝えできればと思います。
⑴ワイヤー矯正
金属ワイヤーを用いた矯正自体は18世紀後半から19世紀初頭、ブラケットと言われる装置(現代のワイヤー矯正の主流)を用いた矯正は20世紀初頭より行われており、その歴史は200年以上となり装置や器具も日々進化をしています。
ステンレスやニッケルチタンで出来たワイヤーの、元に戻ろうとする力を利用して歯を動かしていきます。
①治療の流れ
⒈歯茎の状態、ブラッシングの状態のチェック
歯は、歯の周りの力をかけたところの骨が吸収と添加を繰り返すことで移動していく仕組みとなっています。
そのため、歯周病にかかり歯茎の炎症が起きている箇所は、通常以上に骨の吸収が起こり、もっと歯がグラグラになってしまう恐れもあります。
また、矯正を始めると歯の周りには装置がつくため、現状より確実に清掃が難しくなります。
そのため、矯正治療が終了し装置を外した時に虫歯だらけにならないよう、歯ブラシもしっかりできる状態にしておくことがとても大切です。
虫歯や歯周病の治療が必要な場合は、先にそちらの治療を行います。
⒉資料採得
・お口の中のお写真やお顔のお写真
歯の見え具合や正中(歯の真ん中)の位置関係などを確認します。
・模型
型取りをして作成した模型では、肉眼では見えづらい奥歯の方まで、噛み合わせの状態を確認することができます。
また、歯のサイズを計測することで、上下のバランスや重なり具合などを見ていきます。
・お顔のレントゲン
レントゲンにより写る骨や歯の位置関係(距離や角度)を計測し、年齢に応じた平均値と比較することによって、骨の大きさや成長方向などをみて、理想に近づけるにはどうしたら良いかの設計図になります。
⒊治療計画の説明
採らせていただいた資料を総合的にまとめた結果、抜歯が必要かどうかや、どういった装置を使用していくか、期間や費用などをお伝えし、実際に治療を進めていくかどうかのご相談を行います。
⒋治療の開始
装置をつけ、治療を開始します。
⒌最終チェック
歯の移動が終わり、最終的な噛み合わせを模型をとって確認します。
微調整を行ったり、問題がなければ6の行程に進みます。
⒍リテーナー(保定装置)の作成・装着
移動した歯は、特に初めのうちは元に戻ろうとする力が働きます。
そのため、最終の位置から歯が動かないための装置『リテーナー』を使用していただき、歯の位置を安定させます。
⒎メインテナンス
必要に応じた期間で、リテーナーが使用できているかや、歯茎や噛み合わせの状態を確認していきます。
②ワイヤー矯正の特徴
・オールマイティ
基本的にどの歯並びにも対応しやすい、オールマイティな治療法です。
・ご自身でやってもらうことが少ない
基本的にはご自身での調整はほとんどありません。
固定された装置の力で歯が動いていきます。
場合によってネジを回したり、ゴムをひっかけたりなどをお願いすることがあります。
・清掃が難しい
器具がつくと、ワイヤーに繊維質なものが絡み付いたりなど、少なからず装置がついていない状態よりは歯ブラシが難しくなります。
・器具により口内炎などができることがある
歯の周りに金属などでできた装置が出っ張るため、擦れて口内炎になることがたまにあります。
当たりやすい部分には、ワックス(装置の当たる部分につけられるガムのようなもの)によって緩和することができます。
⑵マウスピース矯正
①治療の流れ
⒈歯茎の状態、ブラッシングの状態のチェック
原則はワイヤー矯正と同じですが、マウスピース矯正の場合は取り外しが可能なため、歯ブラシは今まで通りの状態で行うことができます。
⒉資料どり
基本的にはワイヤー矯正と同じです。
型取りには、光学印象といって小型のカメラで連写した画像を組み合わせることによってできたデジタル模型として機械に読み込みます。
⒊治療計画の説明
採得した資料をもとに立てた治療計画を、データでシミュレーションし、治療後のイメージを確認することができます。
マウスピース矯正の場合は、少しずつ歯を移動した状態のマウスピースを細かく作成し、約1週間ごとに新しいマウスピースへと交換していくことで歯を動かします。
最終的に歯が移動しきるまでにいくつのマウスピースが必要になるかで、具体的な期間がわかります。
⒋治療の開始
状態に応じたマウスピースをお渡しし、1日のうち20〜22時間(食事や歯ブラシ以外の時間)マウスピースを装着していただき、約1週間で新しいものと交換という行程を繰り返していきます。
⒌最終チェック
2の行程での光学印象を再度行い、必要があれば微調整をどう行うかの検討をします。
方法として、追加でマウスピースをする場合とワイヤーによっての微調整をする場合があります。
⒍リテーナー(保定装置)の作成・装着
ワイヤー矯正と同じ理由から、最終の状態のマウスピースの作成を行います。
⒎メインテナンス
必要に応じた期間で、リテーナーが使用できているかや、歯茎や噛み合わせの状態を確認していきます。
②マウスピース矯正の特徴
・ご自身がいかにきちんとマウスピースを使うかがとても大切
決められた時間と手順で、マウスピースをしっかり装着することで歯が動きます。
途中の行程をさぼって、次のステップに進むことはとても危険です。
取り外しのため、ご自身の使用度がとても大切になります。
・目立たない
透明のマウスピースを装着するので、見た目にはほとんどわかりません。
・歯ブラシがしやすい
ブラッシング時はマウスピースを外すため、通常と同じように歯ブラシやフロス(糸ようじ)を使用することができます。
・難しい場合がある
噛み合わせが深く抜歯も必要な場合や、大きな移動量が必要な場合など、歯並びによってはマウスピースで対応するのがかなり難しいことがあります。
⑶まとめ
それぞれにメリットとデメリットが存在しますが、どちらを選んでもなんのストレスもないということは絶対にありません。
よく歯科医師と相談をし、ご自身にあった治療を選択していただければ幸いです。