目次
⑴インプラント治療とは
以前は歯を失った際の治療方法として、入れ歯やブリッジ(抜いた歯の両隣を削って橋渡しする方法)が主流だったため、残っている歯に負担がかかりやすくなっていました。
インプラントとは人工の材料や部品を体に入れることの総称を言います。歯科では、やむを得ず抜歯となった歯の代わりに、人工の根っことなるネジにようなものを骨に埋め込み、それを土台として被せる方法です。
不思議なことにインプラントの材料となるチタンは金属でありながら、生体親和性が高く(体との馴染みがいい)、骨に埋め込むとインプラントの周りに骨が形成されてしっかりとくっつきます。
よく「痛いんでしょ?」と言われるかたが多いですが、インプラントは基本的に炎症のない部位に行うため、炎症が起きている親知らずの抜歯などに比べると痛みはとても少なく、個人差はありますが痛み止めをほとんど飲まない方も多いです。
⑵インプラント治療のメリット
①他の歯に負担をかけない
何と言っても一番は他の歯に負担をかけずに被せることができることです。
ブリッジでは特に左右の歯を削って、抜いた歯の力を支えるので、削ったことによる歯のダメージ(虫歯になりやすくなる)や力が多くかかることによるダメージが懸念されます。
また入れ歯の場合は削る量はかなり少なくなりますが、異物感による食事のしづらさや、ブリッジ同様周りの歯にはどうしても負担をかけることになってしまいます。
☆他の歯を削らないで済む
☆抜いた歯の分を他の歯に負担させない
という点がとても大きいメリットとなります。
②違和感が少なく、美味しく食事がとれる
入れ歯は取り外し式で、歯茎の上に乗せるような形になるので、歯茎と入れ歯の間に食べかすが入り込んでしまうことが多々あります。
また自身の歯よりも、歯茎を支えにしている入れ歯の方が噛んだときに何倍も沈み込むため、力が入りづらく物を噛みきったり噛み砕いたりが難しくなります。
それと比較し、しっかりと骨に固定されたインプラントは力も入りやすく、違和感なく食事をとることができます。
食事は体全身を作り、お口はその入り口となる部分です。
よく噛め、美味しくお食事がとれることは将来のご自身にとっても大きなメリットとなります。
③他の歯と同様に歯ブラシができる
入れ歯は他の歯と一緒に歯磨き粉をつけて磨いてしまうと、細かな傷ができて逆に細菌の温床になり不衛生になってしまいます。
また、入れ歯の周囲は汚れが停滞しやすく、食後は入れ歯を外してご自身の歯と入れ歯を別々にお手入れする必要があります。
それに対しインプラントは他の歯と同様にブラシを当ててもらうことができます。
④審美的
見た目も周りの歯と色や形を合わせて被せるため、自然な美しい歯を手に入れることができます。
場合によっては事前に歯茎を増やしたりして、より見た目を整える必要があります。
⑤骨が痩せるのを防ぐ
インプラントにより骨へと刺激が行くため、骨が吸収し減るのを防いで切れるとともに、しっかり噛むことで脳へも刺激が行き認知症などの予防にも繋がります。
⑶インプラントのデメリット
①時間がかかる
基本的にはインプラントを骨に植え込んだ後に骨としっかりくっつくための時間がかかります。
場所や適応によってはすぐ被せ物まで入ることもあります。
②費用がかかる
保険適応外のため、費用がかかります。
費用は病院ごとに異なりますが、医療費控除の対象となるので申告することで治療費の軽減になるでしょう。
③外科処置が必要
骨にインプラントを埋めるため、歯茎だけでなく骨にもアクセスする必要があります。一般的な虫歯治療を行う時と同じ麻酔を使用します。
健康な部位に行うため、強い炎症は起きづらいですが、骨が少なく骨を増やすための処置などを行う場合は術後に痛みや腫れが出る可能性があります。
④定期的なメインテナンスは必須
インプラントは人工物のため、虫歯にはなりません。
せっかくやったインプラントがダメになってしまう大きな原因は、歯周病と力のかかりすぎです。
インプラントには自身の歯と同じような歯根膜と言われる周りの組織はなく直接骨と結合しているため、菌に対して免疫が働きづらい状態にあります。
そのため、自身の歯と同等もしくはそれ以上に毎日のケアをしっかり行う必要性があります。
また、力がとても強い方は金属でできたインプラント体が割れてしまうことも稀にあります。
それをできるだけ防ぐために、噛み合わせのあたり具合を定期的にチェックし、力がかかりすぎていないか確認することが大切です。
⑷まとめ
インプラントは歯を失った場合に、他の歯に負担をかけないとても良い治療です。
ただし、長持ちさせるためには歯周病の治療をしっかりと行い、適切な診査診断のもとに行うことが大切です。
費用や時間をかける分、入れたインプラントが長持ちするよう、治療前の相談や治療後のメインテナンスをしっかり行っていきましょう。