コラム

コラム

『その症状、オーラルフレイルかも…?』 〜体の衰えはお口から〜

近年注目されつつある、フレイルという言葉をご存知ですか?

フレイルとは“虚弱”を意味する英語「frailty」を語源として作られた言葉です。健康な状態と要介護に至る中間地点の状態で、病気ではないけれど身体の衰えを感じる段階を指します。

オーラルフレイルはその中でも口の機能の低下を表します。

 

⑴オーラルフレイルが注目されているのはなぜ?

その理由は、口は人が生きるために大切な食事に必要な機能を司る器官であり、口の機能の低下が全身の機能の低下につながることがわかってきたからです。

 

例えば、

・虫歯や歯周病を放置したことで歯が折れたり抜けたりして、それまで噛めていたものが噛めなくなる

・自然と食べやすい軟らかいものを選択するようになり、いつのまにか軟らかいものを食べることが習慣に、、、

・噛むための筋肉を使わなくなり、結果として噛む機能が低下

・噛むための機能が低下することでより軟らかいものを選択するようになり更に噛めなくなる

・食事が炭水化物などの柔らかいものに偏り、栄養バランスが崩れやすい

・食事の量や摂取カロリーの低下

・筋肉量の低下や体の虚弱が進む

という負の連鎖を引き起こします。

 

徐々に口の機能の低下が進行し、食べ物の選択肢が狭まり栄養に偏りが生じることで心身機能の低下にもつながると考えられています。このような“負の連鎖”に早めに気づくための重要なサインとしてオーラルフレイルが近年注目されています。

 

 

⑵オーラルフレイルの全身に及ぼすリスク

ある調査によると、

・オーラルフレイルの人はそうでない人と比べ、2年以内に身体的フレイルを発症する確率が2.4倍
・4年以内に死亡するリスクは約2倍

ということがわかってきました。

 

ここから言えることは、口のささいな衰えを甘く見てはいけない、ということです。
また、一度落ちた機能は回復が非常に困難です。

 

その他にも

・低栄養状態による体力・免疫力の低下

・誤嚥性肺炎や窒息などのリスクの増加

・認知症の発症リスクの増加

・日常生活に必要な動作に支障をきたす

・寝たきりや要介護になるリスクの増加

・社会的な交流の減少による孤立感やうつ状態のリスクの増加
…口の機能が低下することで、食べられる物も限られてしまい、外食や人との会話が減ってしまうことから、外出が減り社会性の低下へ

 

など放置することにより、口の機能の低下が、全身の衰え、ひいては社会性にまでと大きな問題へと発展する恐れがあります。

 

 

⑶あなたはオーラルフレイル?

以下の質問にあなたはいくつ当てはまりますか?

□ご自身の歯が19本以下である。

□半年前と比べて固いものが食べにくくなった。

□お茶や汁物などでむせることがある。

□口の渇きが気になる。

□普段の会話で、言葉をはっきりと発音できないことがある。

 2つ以上当てはまる場合はオーラルフレイルの可能性があります。
歯科医院での更なる検査をお勧めします。

 

 

⑷オーラルフレイルの予防

①まず必要な箇所は治療をしっかりする!

しっかりと噛めるようにすることが大切です。

 

②バランスのとれた食事を。

・主食、主菜、副菜から一つずつ選んで組み合わせることにより、必要な栄養素をバランスよく摂ることができます。

 ※主食は菓子パンなどではなく、米や麺、甘くないパン

 ※副菜のサラダはポテトサラダやマカロニサラダだとマヨネーズを大量に使っており高カロリー、かつ野菜の量が少ないため、あまりお勧めできません。

 

・バランスの良い食事は糖質のとり過ぎによる血糖値の急上昇や、脂質のとり過ぎ、エネルギーの過剰摂取を防ぎ、生活習慣病の予防にもなります!

 

・筋肉を作るにはタンパク質がとっても大切!

 1食のタンパク質量の目安は20g。
手のひらに乗るくらいのタンパク質を意識して摂取するといいでしょう。

 

③筋トレ

 筋肉の栄養となる物をしっかり噛んで吸収できたら、あとは筋トレをして筋肉を維持または増やしていきましょう。

・アイウベ体操

  1. 口を大きく開けて「あ」と発音する
  2. 口角を左右に広げて「い」と発音する
  3. 唇をすぼめて前に突き出して「う」と発音する
  4. 舌を下に出し、できるだけアゴの先端に近づけるようにして「べ」と発音する

 この4つの動作を1セット×10回を朝昼晩の3回行いましょう。
どれも目一杯やるとより効果が出ます。

 

・風船を膨らましてみましょう!

 小さい時にはできたけど、久しぶりにやってみると意外に難しい風船。
できれば、手は使わず、口の力だけで風船を支えながら膨らましてみましょう。
支えていないと風船が飛んでいってしまうようなら、唇の筋力が弱い証拠です。

 

・舌のトレーニング

⒈舌を上顎に吸い付けて鳴らす

 誤嚥などを防ぐには、舌の筋力がとても大切です。
舌が上顎にしっかりと吸い付く力を鍛えます。

 

⒉ガムトレーニング

 ガムを噛んで柔らかくしたら、上顎にガムを擦り付けるようにベロで前から後ろに向かって伸ばしましょう。
上顎の真ん中に綺麗に伸びてくっついていたらOKです!
この動きは、飲み込む時の舌動きのトレーニングになるので、スムーズに動かせるようにやってみましょう。

 

 

⑸まとめ

コロナによるマスク生活の影響もあり、大きなお口を開けたり、思いっきり笑ったりということが減り、使わなくなってしまった筋肉が知らない間に衰えてしまっている可能性があります。

長く健康でいるために、まずはお口の健康を!