コラム

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フッ素って何? 〜その効果と年齢別活用法をお伝えします!〜 

CMなどでもよく聞く“フッ素”ですが、虫歯予防として実際にどのような働きをしているのでしょうか?
そしてそれをどのように日常に生かしていくと、その効果が正しく発揮されるのかをお伝えできればと思います。

⑴フッ素の働き

①フッ素の働きを知るために・・・

小学校で習ったpH(ペーハー)やリトマス試験紙を覚えていますか?

酸性・中性・アルカリ性かによって、赤や青の紙の色が変化するものです。
pHが7の状態を中性とし、それよりも低いものを酸性、高いものをアルカリ性と言います。

お口の中には、“pHがこれ以下になると歯が溶け始めますよ”という指標があり、これを臨界pH(りんかいぺーはー)と言います。

通常、この臨界pHは5.5とされています。
つまり、やや酸性の状態までは歯は溶けないですが、これより酸性に傾くと歯が溶け始めます。
逆に、臨界pH以上であれば、再石灰化が生じている状態となります。

 

②直接的な作用

・脱灰の抑制

「脱灰」とは歯が溶けることを指します。

口腔内の細菌は糖を栄養源として酸を産生(お口の中を酸っぱい状態に)し、エナメル質(歯の頭の部分)の主成分であるハイドロキシアパタイトを溶かします。

この時、そばにフッ化物がいると、ハイドロキシアパタイトにフッ化物がくっつくことで溶けづらい構造になります。

これを脱灰の抑制と言います。

 

・再石灰化の促進

「再石灰化」とは、溶けた歯の成分が、再び歯に戻ることを指します。

これはフッ素の中でも最も大切な働きです。

細菌が出す酸によって溶けたハイドロキシアパタイトにフッ化物が作用すると、臨界pH(りいかいペーはー:歯が溶け始める状態)が通常5.5なのが4.5となり、再石灰化できる時間が長くなり、脱灰している時間を短くすることができます。

 

・結晶性の改善

再石灰化の際に、フッ化物は溶けたハイドロキシアパタイ優先的に吸着することで、カルシウムイオンを引き寄せてより溶けづらい結晶へと改善していきます。

 

③間接的な作用

・細菌が糖を代謝して酸を作る過程で用いる酵素反応を阻害したり、細菌が細胞内で酸を排泄する働きを阻害します。

 

⑵フッ素の取り入れ方

①自然の中のフッ素

フッ素は反応性が高く、基本的に他の元素と結合してフッ化物として存在します。

海水にも1.3ppmほど含まれていますし、私達が日常摂取している飲食物にも濃度はいろいろですが必ずフッ化物が含まれています。

フッ化物濃度が比較的高い飲食物の例としては、緑茶、紅茶、ウーロン茶(約0.5~1.0 ppm)、海草(2.3~14.3 ppm)、小骨ごと食べる魚(8~19.2 ppm)などがあります。

しかし、これらはお口の中にとどまる というよりは体内へと取り込まれる物であり、虫歯を予防する効果は弱いと言えます。

また、歯を形成する時期に体内へ多く取り込まれ過ぎると、逆に歯が脆くなることもあるため、体内への摂取には注意が必要です。

 

②ホームケアでのフッ素

現在、虫歯のコントロールに最も大切なのは、常にフッ化物がお口の中に存在することと言われています。
そのため、歯磨剤などの口腔ケア用品に含まれるフッ素は歯面や口の中に停留しやすく、虫歯のコントロールに非常に重要と言えます。

今現在日本で買える歯磨き粉は最大で1450ppm(ppm:フッ素の濃度を表す単位)となっています。
しかし年齢によって使用できる量や濃度は異なるので、それらを守って正しく使用することによって最大限の効果得られます。

 

〜年齢別 適切な濃度と使用量〜

・生後6ヶ月(歯の放出)〜2歳

使用量:米粒程度(1〜2mm程度)

歯磨剤の濃度:1000ppm

備考:ブラッシング後にティッシュなどで歯磨剤を軽く拭き取っても良い

   ブラッシングについて専門家のアドバイスを受ける

 

・3〜5歳

使用量:グリンピース程度(5mm程度)

歯磨剤の濃度:1000ppm

備考:ブラッシング後は歯磨剤を軽く吐き出す

   子供が歯ブラシに適切な量をつけられない場合は保護者が歯磨剤を出す

 

・6歳以上

使用量:歯ブラシ全体(1.5〜2cm程度)

歯磨剤の濃度:1500ppm

備考:チタン製歯科材料(インプラント)が入っている場合でも、歯がある場合はフッ化物配合歯磨剤を使用する

 

③正しく効果が出るために大切なこと

その1:先ほどの年齢別に応じた歯磨剤を適量使用した上で、就寝前を含めた1日2回以上のブラッシングを行う

 

その2:ブラッシング後は歯磨剤を軽く吐き出すorうがいは少量の水(ペットボトルのキャップ位)で1回のみとしましょう!

それができない年齢の場合は保護者が軽く拭き取る

→うがいをし過ぎると、せっかくのフッ素が流れ出てしまいます!

 

④上限

う蝕のコントロールに有益なフッ化物ですが、一度に大量に摂取すると中毒症状を起こすことがあります。

乳児向け歯磨剤(低濃度)については、チューブ1本の量を飲み込んでも問題はないとされていますが、万が一を考えて、誤って誤飲をしないよう保管はお子様の手の届かないところにしましょう。

 

  体重20kgの5歳児で計算した場合

急性中毒量 致死量
1000ppm歯磨剤 33ml 100ml
1500ppm歯磨剤 22ml 66ml

 

☆急性中毒症状かな?と思ったら・・・

症状としては、流涎(りゅうせん:よだれが異常に出る)、悪心、嘔吐、腹痛、下痢、痙攣、昏睡などが挙げられます。

もしフッ化物を大量に摂取してしまった時は、フッ化物は胃で迅速に吸収されるのですぐに牛乳を飲んで中和しましょう!
あまりにも大量の場合は胃洗浄や点滴での対応が必要になる場合もありますので、医師にご相談ください。

 

⑤歯磨剤以外のフッ素

フッ化物配合製品の中でう蝕をコントロールする効果について、最も信頼性の高い研究結果が示されているのは歯磨剤ですが、それ以外にフッ素洗口液というものもあります。

虫歯のリスクが高い方(主に唾液が出づらい方)は、『フッ素洗口』を合わせて使用していただくのが効果的です。
フッ素洗口液はドラッグストアやネットストアからもご購入いただけます。

歯磨剤単独で使用するよりも7%ほど、虫歯の予防効果が上がります。
お菓子をちょっと口にした後や、就寝前などのフッ素洗口がおすすめです。

 

 

⑶まとめ

フッ素は、できてしまった虫歯をなくすことはできませんが、初期虫歯であればその進行を抑えて治療へと進まずに済む可能性を上げてくれます。

毎日行う歯磨きだからこそ、なんとなくフッ素の入った歯磨き粉を使うのと、正しく最大限効果が出るように磨くのでは積み重なるものが大きく違います。

歯周病の予防には歯磨きを。虫歯の予防にはフッ素を。

是非ご自身に合った濃度と量をご確認の上、日々のケアにご活用ください。