歯科医院では、お口の中に入れる器具がたくさんあります。それらは本当に綺麗なのか?歯医者で口をゆすぐ水は飲んでも大丈夫なのか?心配な方はたくさんいるかと思います。
当院で実際に使用されている器具がどのように処理されているか、皆様に安心して治療を受けていただけるよう、詳しくお伝えしていきます。
⑴『スタンダードプリコーション』という考え方
以前、ニュースなどで歯を削る機器(タービンやコントラ)が歯科医院の約7割で使い回されているということが報じられました。
それらの機器は中に唾液だけでなく、血液も入ってしまい、使いまわすことにより院内感染をまねく恐れがあります。
歯科医院では、唾液や血液などに触れる機会が非常に多い場所です。
現在の医療現場の考え方として、すべての体液・血液・汗以外の分泌液・排泄物・傷のある皮膚や粘膜を感染の可能性のある物質とみなし対応することで、患者さんと医療従事者双方における院内感染の危険性を減少させる予防策です。
当院でもスタンダードプリコーションに則り、器具の消毒・滅菌を行っています。
⑵当院における器具
当院では米国CDC(疾病管理予防センター)が公表しているガイドラインや医療法などの最新の科学的根拠に基づいた実践可能な感染対策マニュアルを、滅菌管理士の指導のもと作成し実践しています。
使用した器具
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廃棄物分別
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洗浄(ミーレジェットウォッシャーにて)
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消毒orメンテナンス・包装・滅菌
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保管
とういう流れで、使用する用途に応じて、最も厳しい基準であるクリティカル・次いでセミクリティカル・そしてノンクリティカルと3つの基準に分けて器具の消毒・滅菌を行います。
当院では洗浄の際も、一般の歯科医院では数少ないミーレジェットウォッシャーという医療機器用の洗浄機を導入しております。
付着した唾液や血液はタンパク質なので、卵と同じで熱を加えると固まってしまいます。
それを固めない最適な温度でしっかりと洗い流し、細菌やウィルスなどの病原性微生物を不活化してくれるため、洗浄だけでも大きな違いがあります。
また、使用している滅菌(すべての微生物を殺滅させるか完全に除去する)機は、クラスBとクラスSを導入しています。
Bと聞くと、A、B、Cの順で2番目?と思う方がいるかもしれません。
医療先進国のヨーロッパでは滅菌のクオリティに様々な規格が設けられており、「EN13060」という規格においては、クラスN・クラスS・クラスBと分類されています。
その中でクラスBという滅菌レベルは、世界で最も厳しいヨーロッパの滅菌基準の中でも最高クラスとなっています。
クラスSでは使用したタービンやコントラ(歯を削る機器)などのセミクリティカルのもの(軟組織を貫通せず、骨や血液内にも挿入しないもの)を、その都度滅菌をするために使用しております。
よくパックされた器具を見かけるかと思いますが、クラスNではパックされた状態では逆に滅菌がしきれず、不衛生な可能性があります。
なので、“パックをしているから必ずしも綺麗”ではなく、パックした物を正しい機械で滅菌ができているということが大切になります。
⑶出てくるお水は綺麗?
当院では歯科ユニット(診察台)に給水管路クリーンシステムを搭載しております。
ユニット内の溜まり水は時間の経過や管路内の汚れ(有機物との接触)、環境要因等により残留塩素が少なくなると菌が繁殖します。
クリーンシステムでは夜間など使用していない間に薬液を停留させ菌の繁殖を防ぎ、朝の使用前に新しい綺麗な水を循環させるため、常に清潔な水を使用して治療することができます。
⑷まとめ
使用されている器具などが実際にどういった処理がされているのか、なかなかわからない部分になりますが、もし心配なことがあれば遠慮なくご質問いただければと思います。
可能な限りわかりやすく、当院での消毒・滅菌の方法についてご説明させて頂きます。